ハンドブックシリーズ
監修: | 藤原 修氏(名古屋工業大学) 宅間 董氏(東京電機大学) |
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著者: |
渡辺聡一氏(情報通信研究機構) 浜田リラ氏(情報通信研究機構) 和氣加奈子氏(情報通信研究機構) 伊藤公一氏(千葉大学) 齊藤一幸氏(千葉大学) 関野正樹氏(東京大学) 池畑政輝氏(鉄道総合技術研究所) 上村佳嗣氏(宇都宮大学) 太良尾浩生氏(高松工業高等専門学校) 濱田昌司氏(京都大学) 林 則行氏(九州大学) 菊池武彦氏(一般財団法人 工業所有権協力センター) 山崎健一氏(電力中央研究所) 森田長吉氏(千葉工業大学) 平田晃正氏(名古屋工業大学) 藤原 修氏(名古屋工業大学) 伊坂勝生氏(徳島大学) 鈴木敬久氏(首都大学東京) 多氣昌生氏(首都大学東京) 工藤 希氏(交通安全環境研究所) 野田臣光氏(東芝ホームアプライアンス(株)) 世森啓之氏(電気安全環境研究所) 横田 康氏(中部電力(株)) |
定価: | 9,020円(本体8,200円+税) |
判型: | A5 |
ページ数: | 200 ページ |
ISBN: | 978-4-903242-46-0 |
発売日: | 2011/2/1 |
ユビキタスネットワーク社会の到来と相まって、多目的の電磁波利用が課程の内外において急増する一方、錯綜する電磁波の人体影響が懸念されている。電磁波がヒトに及ぼす作用で影響の可能性が科学的に想定されるものは、極低周波に対しては体内に誘導される電界・電流であり、マイクロ波に対しては電力吸収に伴う発熱である。例えば、変動磁界は地磁気よりもレベルが桁違いに低くても曝露すれば体内には電流が誘導され、それが脳神経や心筋の活動による内因性電流を超える場合には何らかの生物学的影響が引き起こされ、閾値を越えると刺激となる。マイクロ波に対しては、代謝熱と同程度の熱源が電力吸収で生じると、熱調整系に可逆的な影響を及ぼす事例が動物実験で確認されている。ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)の定めた該ドラインでは、1 HZ-10 MHzの範囲では内部電界に対して、また100 kHZ-10 GHzの範囲では比吸収率(Specific Absorption Rate:SAR)に対して制限値が設けられており、100 kHZ-10 MHzの周波数帯では電界とSAR両方の曝露評価が求められる。総務省・米国・ヨーロッパ諸国の防護指針や安全基準もこれに準じるように定められている。
近年、人が電子・情報機器、運輸システムなどから漏洩する微弱な電磁波に曝される機会が増加しているが、一般にはこのような電磁波は過度的で広い周波数帯域の界成分を有し、人体への空間的な曝露分布は不均一となる場合が多い。さらに広帯域の電磁波曝露に対しては、体内に誘導される電界・電流または電力吸収のいずれかの影響が支配的になるかは曝露状況により大きく異なり、双方を定量的に評価する必要性が生ずる。しかしながら、このような曝露評価手法が十分確率されてきたとは言い難い。IEC(国際電気標準会議)においても「低周波・中間周波数帯の電磁界による人体内誘導電流計算方法」が議論されている。特に、近年のガイドラインでは、解剖学的に詳細な人体モデルを用いて外部電磁界と内部誘導量の関係を定量化し、改訂に反映させている。
このような背景から、電気学会「電磁界による体内誘導電界・電流調査専門委員会」(委員長・宅間薫)では極低周波から中間周波数帯を含む高周波数帯における誘導量評価法並びに比較計算法が検討・調査された。この報告を受け、同学会「不均一および過度的な電磁界による体内誘導量評価技術調査専門委員会」(委員会:藤原修)を設置し、不均一および過度的な電磁界による体内誘導量を定量的に算定・評価する手法を検討した。また、より現実的な曝露条件を計算機上で再現するためには、波源おモデル化が必要となるが、波源推定のための逆問題と基礎となる測定手法の調査した。
本書は、電磁界の生体影響の内外の情勢、人体防護ガイドラインの動向を解説するとともに、「電磁界による体内誘導電界・電流調査専門委員会」において調査した電磁界と生体作用の評価手法を、「不均一および過度的な電磁界による体内誘導量評価技術調査専門委員会」において一層調査するとともに、最新の標準化動向をまとめたものである。
藤原 修
宅間 薫